大国主命は八十神を退けて寄り添うヤガミヒメと睦まじい関係をむすんでいたが、スサノヲの命で娘神、スセリビメを正妻にしていた。ところがスセリビメは嫉妬深く、恐れたヤガミヒメは生まれた子を木ノ股に挟んで帰ってしまった。ヤチホコ(大国主命の別名)は高志国(こしのくに)に美しい娘神がいる事を知り、妻にしようと出掛けていくのだった。


大国主命・豹変です。八十神にいじめられていた頃は、ひたむきな青年神でしたが、2度に渡り蘇ってカラは、行動そのものも大胆になり、まずは内縁の妻ヤガミヒメと暮らして子供を設けました。次いでスサノヲの娘神を娶るため、スサノヲの仕掛けた知恵と度胸試しをスセリヒメの助けを借りて切り抜け、怖いスサノヲに娘神と結婚する許しをもらった。
「今からお前はオオクニヌシと名乗れ。スセリヒメを正妻としろ」
スサノヲは誰より怖い。正妻にしたのは言うまでも無いが、オオクニヌシがおとなしくしていた期間は短かった。高志国に沼河比売(ヌナカワヒメ)がいる事を知って、早くも気持ちは揺れた。ヤガミヒメに“逃げられた”ばかりだというのに…。

ごく侶 copilotで生成
ヤチホコはご苦労さん、にも出雲の地から高志国(こしのくに)へとやってきたのです。高志は越前、越中、越後のことで、後年、3国に分かれるまでは”高志国”と呼ばれていたのです。ああ、何故、出雲からやってきたのか、ですが、どこかの島に飼われていた雄犬は、結構遠い別の島に飼われていた雌犬に会うため、海を割って通ったという本当の話が2000年代の初め前後にありました。犬に取っては遠泳ですが、泳ぎのスタイルはひとつだけ。
「犬かき」
大国主命にとって高志国(こしのくに)は遠くはありません。なんと言っても“神様“です。久米の仙人は、飛行術で飛んでいるとき、洗濯をしている女の「脛(はぎ)の白かりけるを見て」平常心を失い、飛行の術は解けてしまって墜落です。修行僧が空を飛ぶのですから、大国主命にして見れば、何事もないひとっ飛びでしょう。
ヤチホコからヌナカハヒメへ
八千矛の 神の命(みこと)は
八島国 妻枕(つまま)きかねて
遠遠し 高志の国に
賢(割かし)女を 有りと聞かして
麗し女を有りと聞こして
さ婚(よば)ひに あり立たし
婚ひに あり通はせ
太刀が緒も いまだ解かずで
襲(おすひ)をも いまだ解かねば
………
ヤチホコの神の命は 国中を探したが枕を共にする妻を得られず
遠い遙かな高志国(こしのくに)に賢く 麗しい乙女がいると聞いた。
妻にしよう と思いたち 妻にしようとやってきた。
太刀を結んだ紐を まだほどいていない
頭からふわっとかけた 被り物も取り去ってはいない
………
浮気男神を叩け
朗々と歌い上げるヤチホコの声は響き渡りますが、戸を引いても、押しても返事は無く、山野、庭にいる鶏まで鳴き出すようなありさまです。
と、こう言うような詩で、ヌナカハヒメを口説いたが、板戸は開かずだった。
そしてヌナカハヒメは詩を返した。
八千矛の 神の命
ぬえ草の 女にしあれば
我が心 裏渚(うらす)の島ぞ
今こそは 我鳥にあらめ
……(以下略)
ヤチホコの神様。私はか弱い女。砂浜や水際で遊ぶ小鳥のようなものです。でも詩をお訊きして、今はお心に添えませんが、やがてはあなたの鳥になるでしょうー。
さらにヌナカハヒメは、思わせ振り、そして、際どいまでの詩を返す。
青山に日が沈んだら夜が来るでしょう。明るい朝日のような微笑みで、タク布のように白い腕で、淡雪のような若い胸に、手と手で抱き合いながら、モモを合わせ寝ましょう。ヤチホコの神様、焦らないで。
どうぞ、旦那様、このお酒を召し上がって、今夜はゆっくりお休み下さい。
こんな詩のやりとりで、その夜は過ぎた。そして、次の夜、二人は結ばれ、共に夜を過ごした。
イヤー、長い、長い。“長恨歌”